2019年12月26日木曜日

No.77 ザイフェン村の木のおもちゃ

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 

 
 観光客増加中の「ザイフェン村」は、ドイツとチェコの国境を跨ぐ山岳地帯「エルツ山地」にある人口2千人ほどの小さな村です。

 この村で作られている木製玩具やクリスマス用装飾品を目当てに世界中から人びとが訪れます。

 木製玩具には三輪車や駒やパズルなどがあり、クリスマス用装飾品にはくるみ割り人形、煙出し人形、天使の楽団、キャンドルホルダー、クリッペ(イエス・キリストの生誕の様子を表すフィギュア)などがあります。 木彫りの物もあれば、木工ロクロで作られたものもあり、カラフルなものもあれば、天然の色合いをそのままにしたものもあります。

 「ザイフェン村」には木製工芸品の工房が百軒以上あり、オモチャ作りの行程を見学することもできますし、工房直営店ではオモチャたちが所狭しとばかりに並んでおり、それらを眺めるのも、その中から一つを選ぶのも楽しいものです。

 オモチャといえども、これらのオモチャの人形たちは、愛らしいだけでなく凛とした美しさと気品を備えており、個性豊かで、大人も子供も虜にしてしまうほどの魅力を持っています。

 その魅力を利用して悪賢くお金儲けを企むヤカラにより、2006年ごろから、アジアで量産されたイミテーションが格安で流通するようになってしまいました。 これらの模造品はドイツの有名観光地での土産物店でも売られていますので要注意です。一見同じように見えますが、材質が悪く、加工と色づけが粗雑で、本物が持つ温雅な味わいがありません。 商品に公式のロゴの刻印が入っているか、もしくは公式認定書付きであれば本物です。
 
 12世紀に始まったとも言われている「ザイフェン村の木工芸技術」による工芸作品の中でも、特にクリスマス用装飾品は、素朴ながらも格式高い雰囲気があり、厳しい冬の寒さを忘れさせてくれるような温もりがあります。 静粛に過ごすドイツのクリスマスには欠かせない伝統工芸品なのです。

クリスマスマーケットで売られているザイフェン村の木のおもちゃは、こちらでご覧になれます。 是非こちらのリンクからご閲覧下さいませ。 
http://junko-yamamoto.blogspot.de/2016/12/2016.html



 







2019年12月12日木曜日

No.76 クリッペ 

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 「飼い葉桶」を意味する「クリッぺ(Krippe)」は、イエス・キリストの生誕の様子をフィギュアで表したもので、12月の風物詩です。


 イエス・キリストは牛やロバを飼う家畜小屋で生まれ、飼い葉桶に寝かせられていたと伝えられています。


 飼い葉桶を囲むようにマリアとヨゼフ、それを見守るかのような羊飼いと羊がいるのが一般的なクリッペですが、凝ったものですとそれ以外にも、聖書に登場する人物や動物がいたり、家畜小屋の周りの樹木や星や、生誕話に纏わるいろいろな小道具などもあります。


 シュツッツガルトのクリスマスマーケット敷地内のクリッペも本格的です。本物の家畜小屋が設置され、期間中は馬や羊やロバが飼われており、家畜小屋の中には、木彫りで等身大に作られたマリアやヨゼフや生まれたばかりのイエス・キリストのフィギュアが飾られてあります。


 クリッペの大きさは実に様々で、このように等身大のものから、マッチ箱の中に幾つものフィギュアが収められているような超ミニチュアなものまであります。 サイズだけでなく素材もいろいろです。木や陶器や蝋などが主な素材ですが、伝統的なクリッペはシモフリ松の木が使用されています。シモフリ松の木は、柔らかくて彫りやすく、害虫を寄せ付けず、香ばしい匂いを放つため適しているそうです。


 ドイツ東部にあるエルツ山岳地方(シュツッツガルトから東へ450km)は、クリッペなどの木彫りの工芸品の産地として有名です。この地方の伝統の技で作られるクリッペはとても高価ですが、美しく温かみに溢れて魅力的です。


 「いつか自分好みのクリッペを自宅に飾りたい」と願って、そのために貯金をし、450km離れているエルツ山岳地方まで足を運び、好みの作家に特注する友人もいます。




クリスマスマーケットの様子がご覧になれます。是非こちらのリンクからご閲覧下さいませ。 
http://junko-yamamoto.blogspot.de/2016/12/2016.html

2019年5月23日木曜日

No.63 グラスに目盛り フィルライン Füllstrich


エッセイ 静かなドイツの森の窓から 
 
 ドイツのレストランで飲み物を注文すると、「あれ?」と思うことがあります。 

グラスやジョッキに200ml」「500mlなどのフィルライン(英語のfill=満たす、line=)」(ドイツ語ではフュル シュトリッヒ=Füllstrich )と呼ばれる目盛りが刻み込まれてあるのです。 

それは「飲食店内でのドリンク容器には、容積を示すフィルラインの刻印が必須」であり、「グラスやジョッキが垂直に立っている状態で、液体がフィルライン以上になるように注ぐ」ことが法として定められているためです。 

 飲み物がラインまで達していなければ、客は堂々と指摘して飲み物を継ぎ足してもらうことが出来ますし、店は罰金を支払うことになります。

 「ビールには泡があるけれど、どうなるの?」 

そうなのです!「フィルライン」のきっかけはオクトーバーフェストや居酒屋でのビールの容量ゴマカシ提供」でした。

値段不相応な、泡でごまかしたような量のビールを提供する供給者に対して、1970年に組合が結成され、取り調べが行われるようになりました。
そして翌年にはドイツ初の「フィルライン」に関する法が定められたのです。 

それでも「泡もビールの一部!」だと強調しジタバタする供給者がおり、それに対しては「ビールをジョッキに注いでから1分経過し、泡が落ち着いた状態」を基準とし、「泡はフィルラインよりも上に浮いてなければならない」という規制が設けられました。 

 オクトーバーフェストなどのビール祭りでは、2リットルの巨大ジョッキが使用されていますが、この場合の「フィルラインは、容器の上縁から最低4cm下に離れた位置に刻印」することが義務付けられています。 

 これにより、「4cm近い泡が浮いていても、液体としてのビールはきっちり2リットル入ってますよ」という保証の下、「損はしていないゾ」と眉を開いてガブ飲みできるようになったのです。




2019年3月3日日曜日

New CD :-)



Frédéric Chopin

1. Nocturne Op. 9-2, Es-Dur

2. Prélude Op.28-15, Des-Dur

3. Scherzo Op.31, b-moll



4. Alexander Scriabin

Étude Op.2-1, cis-moll



5. Wolfgang Amadeus Mozart

Piano Sonata „facile“ KV545, C-Dur (1st Movement)



Ludwig van Beethoven

Piano SonataPathétique“ No. 8,  c-moll, Op. 13

6. I. Grave – Allegro di molto e con brio

7. II. Adagio cantabile

8. III. Rondo: Allegro



9. Frédéric Chopin

Prélude Op.28-No.4, h-moll

10. Franz Liszt

Liebestraum No. 3, As-Dur


Junko Yamamoto Piano

&© 2019 Junko Yamamoto
recorded January 2019 in studio himmelschütte
recording, mix & mastering: Oliver Frick
cover photo: Jumpei Tainaka
cover design/layout:  Emi Nishimura

2018年9月13日木曜日

No.46 マイクロプラスチック

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 

 自然の力で分解されるまでに数百年の時間がかかるプラスチック製品は、現代人にとって大きな環境問題となってしまいました。
   

 海に流入した プラスチックごみが辿り着く海域「太平洋ゴミベルト」は日本の4倍以上の面積を有しています。
 

 5mm以下の微小な「マイクロプラスチック」は あらゆる海洋生物の体内に入り蓄積され、魚介類を食す私たちの人体への悪影響も指摘されています。
 

 今年の4月には、胃の中に約30キロのプラスチックゴミが溜まって死体と化した可哀想なマッコウクジラのニュースが、海を汚染する深刻なプラスチックゴミ問題として話題になりました。
 

 ドイツで生活をしていて、ここ3年ほどで顕著になったと感じることは、ほとんどのスーパーの袋が紙製か布製だけになったこと、商品を全くの無包装で販売するお店が増えつつあること、ファーストフードなどでのテイクアウト用スプーンやファークが木製になったこと、「プラスチック袋を提げて歩いていると、何となく恥ずかしい」思いをすることが多くなったことなどです。消費者のプラスチックゴミ問題への意識が高くなっていることは確かなようです。
 

 今年の5月、欧州連合(EU)は「2030年までに、使い捨てのプラスチック包装をEU内で無くす」ことを目指す「プラスチック戦略」を打ち出しました。
 

 しかし、EU内でプラスチックごみをゼロにするだけでは単純に解決できない地球規模の大問題になってしまった今、

「環境負荷の少ないプラスチックの代用は見つかるのか」「新興国でのごみ廃棄インフラとどう取り組むのか」などの課題もあります。
  

 私たち日本人にとっては、「美しく包装された商品」から「簡易包装」や「無包装」へ 慣習離れができるのか、ということも対象課題となりそうです。