エッセイ 静かなドイツの森の窓から
ドイツのレストランで飲み物を注文すると、「あれ?」と思うことがあります。
グラスやジョッキに「200ml」「500ml」などの「フィルライン(英語のfill=満たす、line=線)」(ドイツ語ではフュル シュトリッヒ=Füllstrich )と呼ばれる目盛りが刻み込まれてあるのです。
それは「飲食店内でのドリンク容器には、容積を示すフィルラインの刻印が必須」であり、「グラスやジョッキが垂直に立っている状態で、液体がフィルライン以上になるように注ぐ」ことが法として定められているためです。
飲み物がラインまで達していなければ、客は堂々と指摘して飲み物を継ぎ足してもらうことが出来ますし、店は罰金を支払うことになります。
「ビールには泡があるけれど、どうなるの?」
そうなのです!「フィルライン」のきっかけはオクトーバーフェストや居酒屋でのビールの「容量ゴマカシ提供」でした。
値段不相応な、泡でごまかしたような量のビールを提供する供給者に対して、1970年に組合が結成され、取り調べが行われるようになりました。
そして翌年にはドイツ初の「フィルライン」に関する法が定められたのです。
それでも「泡もビールの一部!」だと強調しジタバタする供給者がおり、それに対しては「ビールをジョッキに注いでから1分経過し、泡が落ち着いた状態」を基準とし、「泡はフィルラインよりも上に浮いてなければならない」という規制が設けられました。
オクトーバーフェストなどのビール祭りでは、2リットルの巨大ジョッキが使用されていますが、この場合の「フィルラインは、容器の上縁から最低4cm下に離れた位置に刻印」することが義務付けられています。
これにより、「4cm近い泡が浮いていても、液体としてのビールはきっちり2リットル入ってますよ」という保証の下、「損はしていないゾ」と眉を開いてガブ飲みできるようになったのです。