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2019年5月23日木曜日

No.63 グラスに目盛り フィルライン Füllstrich


エッセイ 静かなドイツの森の窓から 
 
 ドイツのレストランで飲み物を注文すると、「あれ?」と思うことがあります。 

グラスやジョッキに200ml」「500mlなどのフィルライン(英語のfill=満たす、line=)」(ドイツ語ではフュル シュトリッヒ=Füllstrich )と呼ばれる目盛りが刻み込まれてあるのです。 

それは「飲食店内でのドリンク容器には、容積を示すフィルラインの刻印が必須」であり、「グラスやジョッキが垂直に立っている状態で、液体がフィルライン以上になるように注ぐ」ことが法として定められているためです。 

 飲み物がラインまで達していなければ、客は堂々と指摘して飲み物を継ぎ足してもらうことが出来ますし、店は罰金を支払うことになります。

 「ビールには泡があるけれど、どうなるの?」 

そうなのです!「フィルライン」のきっかけはオクトーバーフェストや居酒屋でのビールの容量ゴマカシ提供」でした。

値段不相応な、泡でごまかしたような量のビールを提供する供給者に対して、1970年に組合が結成され、取り調べが行われるようになりました。
そして翌年にはドイツ初の「フィルライン」に関する法が定められたのです。 

それでも「泡もビールの一部!」だと強調しジタバタする供給者がおり、それに対しては「ビールをジョッキに注いでから1分経過し、泡が落ち着いた状態」を基準とし、「泡はフィルラインよりも上に浮いてなければならない」という規制が設けられました。 

 オクトーバーフェストなどのビール祭りでは、2リットルの巨大ジョッキが使用されていますが、この場合の「フィルラインは、容器の上縁から最低4cm下に離れた位置に刻印」することが義務付けられています。 

 これにより、「4cm近い泡が浮いていても、液体としてのビールはきっちり2リットル入ってますよ」という保証の下、「損はしていないゾ」と眉を開いてガブ飲みできるようになったのです。




2018年9月13日木曜日

No.46 マイクロプラスチック

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 

 自然の力で分解されるまでに数百年の時間がかかるプラスチック製品は、現代人にとって大きな環境問題となってしまいました。
   

 海に流入した プラスチックごみが辿り着く海域「太平洋ゴミベルト」は日本の4倍以上の面積を有しています。
 

 5mm以下の微小な「マイクロプラスチック」は あらゆる海洋生物の体内に入り蓄積され、魚介類を食す私たちの人体への悪影響も指摘されています。
 

 今年の4月には、胃の中に約30キロのプラスチックゴミが溜まって死体と化した可哀想なマッコウクジラのニュースが、海を汚染する深刻なプラスチックゴミ問題として話題になりました。
 

 ドイツで生活をしていて、ここ3年ほどで顕著になったと感じることは、ほとんどのスーパーの袋が紙製か布製だけになったこと、商品を全くの無包装で販売するお店が増えつつあること、ファーストフードなどでのテイクアウト用スプーンやファークが木製になったこと、「プラスチック袋を提げて歩いていると、何となく恥ずかしい」思いをすることが多くなったことなどです。消費者のプラスチックゴミ問題への意識が高くなっていることは確かなようです。
 

 今年の5月、欧州連合(EU)は「2030年までに、使い捨てのプラスチック包装をEU内で無くす」ことを目指す「プラスチック戦略」を打ち出しました。
 

 しかし、EU内でプラスチックごみをゼロにするだけでは単純に解決できない地球規模の大問題になってしまった今、

「環境負荷の少ないプラスチックの代用は見つかるのか」「新興国でのごみ廃棄インフラとどう取り組むのか」などの課題もあります。
  

 私たち日本人にとっては、「美しく包装された商品」から「簡易包装」や「無包装」へ 慣習離れができるのか、ということも対象課題となりそうです。











  

2018年8月23日木曜日

No.45 「がぎぐげご」の多いドイツ語

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
  
 ドイツ語は「がぎぐげご」の多い言語です。
「ゲガンゲン=行った」「ゲゲッセン=食べた」「ギガント=巨人」「ゲーゲント=地域」「グルゲル=のど」などの例を見ても分かるように、無骨な響きがします。
 
 今やすっかり日本語になっている言葉「ガーゼ」や「ギプス」や「ゲレンデ」も、もともとはドイツ語です。
 
 ドイツ語は日本語と同じように、複数の名詞を次々と繋いで1つの複合語を作れることでも有名です。 ドイツ語の出版物に登場する単語の中で最も長いものであり、1996年版のギネスブックに掲載された言葉に「ドナウダンプフシフファートエレクティツィテーテンハウプトベトリープスヴェルクバウウンターベアムテンゲゼルシャフト」という、日本語に訳すと「ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合」というものがあります。
 
 日本語のように聞こえる言葉もあります。
「アリガートー=わに」「イマー=いつも」「ネ?=(だよ)ね?」「アッソー=あっそう」「ブス=バス」「ボンボン=飴玉」「アイ=卵」「ラーメン=枠、フレーム」「ナーゼ=鼻」などです。
  
 「嬉しいです」という気持ちを伝えるためによく使う表現で 「イッヒ ビン フロー= (英語ならばI am glad)」がありますが、約20年前にドイツ生活をし始めたころ、嬉しいことがあると 「イッヒ ビン フロー、イッヒ ビン フロー」と言ながら飛び跳ねていると、居合わせたドイツ人はちょっと困ったような恥ずかしいような、なんだか笑いを堪えているような表情を浮かべたのでした。
 
 後になって分かったのですが、あの時RとLを間違えて発音しており、「私はノミです、私はノミです」と言いながらピョンピョン飛び跳ねていたのでした 。

 




2018年4月12日木曜日

essay No.36 イースター(復活祭)


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

  
ドイツの国民祝日であるイースター(復活祭)の日にちは毎年異なります。

 
 移住民の多いドイツでは宗教観も様々であり、現在では 「キリストの復活」よりも「春の訪れ」を祝う人の方が多いように感じます。

 ドイツの春の訪れは唐突です。 3月中旬頃までドーンと居座っている厳つい冬将軍は、 ある朝突然姿をくらまし、暖かい春が舞い降りてきます。この体験をすると、宗教に関係なく誰もが、春の象徴である生命の息吹を感じ、春を祝い、春の来訪に感謝したくなります。

 
  新しい生命が輝きだす春のお祝いであるイースターには、生命の象徴である卵や、 多産であることから豊穣のシンボルである兎がイースターグッズのモチーフとして使われています。

 春分のころになると、色鮮やかに塗られたゆで卵や、卵の形やウサギの姿をしたチョコレートが売られるようになり、「今年は何日がイースターだったかな?」「3月中旬から4月中旬のどこかの日曜日だけど... 」という会話が飛び交うようになります。

 
 イースターの日取りは、「春分の日のあとに来る最初の満月の次の日曜日」というように定められています。今年の春分の日は3月21日でした。満月になったのは3月31日、土曜日。そこから一番近い日曜日がイースター日ですから、今年は4月1日だったわけです。来年の場合は、今年よりも3週間も遅く421日になります。

 イースターは「十字架に掛けられて亡くなったイエス・キリストの復活を祝する日」だけでなく 、「春の到来をお祝いする日」でもあります。「イースター」の語源は「エオストレ(Eostre)」という春の女神の名前であるという説もあります。

 冬の間はついつい厳しい面持ちをしているドイツ人ですが、この時期になると「卵から孵った雛」のように元気よく活気づいた表情になります。



2017年9月28日木曜日

essay No.23 ドイツの挨拶

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 ドイツの一般的な挨拶の仕方は握手です。

立場が上の人から下の人へ手を差し伸べるのが常識となっています。しかし、仕事絡みのないパーティーなどでは、社会的立場や年齢を問わず、その場にいる者同士が自ら積極的に握手を求め合います。

 手を握る強弱は十人十色です。ソフトに「ふわっと握る人や、1メートルくらい向こうから助走をつけてグワシッ!と握る人、こちらがイタタタッ!と悲鳴を上げそうになるほど強く握ってきたり、3分くらいシェイクし続けて止めない人もいます。

 他の挨拶の仕方では、家族や親しい友人同士でのハグがあります。ハグ=抱擁。抱擁と言うと淫靡な感じがしますが、ハグにいやらしさはありません。ハグは家族愛や友情を確認し合える素晴らしい方法です。

 人間にとって弱点である背中に手を回すハグは、お互いに信用し合っていないと出来ないものです。

 相手のことを心から大切に思っている。信頼している。共に喜びを分かち合い、 辛い時にはあなたの助けになりたい。という人間愛に溢れる気持ちを身体で伝い合える 挨拶がハグです。

 また、私たち日本人にとってはえっ!?とビックリするような挨拶習慣もあります。同性だろうが異性だろうが、親しい友人との挨拶として、右にチュ、左にチュと両方の頬にキスをします。

 挨拶とは言え、嫌いな人ともチュするの!?と思いませんか?

 スキンシップ効果とは不思議なもので、喧嘩をしたり気まずくなった相手とチュッ、チュッと挨拶を交わすことによって、相手に対する気持ちが和らぎ、友人としての距離感が再び縮まる効力があるようです。

  何百年も戦争が繰り返されてきたヨーロッパ大陸に住む人々が、争いごとをせずに仲良くし続ける方法」の一つとして習慣化していったのが、これらの挨拶なのかもしれません。

2017年6月22日木曜日

No.17 トラム(Tram) 路面電車

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
  
 ドイツ語でトラム(Tram)とは、路面電車のこと。
 
 シュツットガルトのトラムは約150年の歴史があり、末永く市民に愛用され続けるために一路邁進している事柄が多くあると聞いています。その中から、特記すべき4点をご紹介します。
 
 1.技術。
高齢者や身体障害者やベビーカー使用の親子連れにとって優しいバリアフリー化が、各電車と各停留所で徹底されています。
 
 2.運用のネットワーク。
ドイツ鉄道や市バスや郊外バスと切符を共通にして、利用しやすい仕組みが作られています。そして、利用者が乗り換えしやすいように、停留所が隣同士に設置されており、トラムとバス共通の広場が設けられています。

 3.景観保護。
芝生軌道の保守と区間拡大が推進され、利用率が高い停留所付近には緑溢れる広場が設置されています。
それ以外にも、トラムと停留所のデザインに統一性を持たせて魅力的な景観作りがなされています。
 
 4.環境保護。
市と協力しながら『市の美しい空気保全のためになるべく車を乗らない日(昨年2016年は計85日あり)』には切符が半額で提供されています。
その他にも、トラムに自転車を乗せるスペースが設置されていたり、市内の各停留所には公共用レンタルサイクルサービスがあります。

 停留所から目的地までチョロっと自転車で行けるシステムがうまく出来ています。これも、市の空気環境保全と地球温暖化緩和策のために、車をなるべく使用しないでおこうという取り組みです。
 
 私が子供のころは、 路面電車なんて田舎の乗り物だという意識がありましたが、違います!
 路面電車はヨーロッパでは、ハイテク、美観、環境保護などの点にて注目を浴びているクールな乗り物で、トラムのない都市なんてカッコワルイのです。
 
 故郷福井にドイツ製のトラムが走っているのが嬉しく誇らしいですし 、住民のため、また都市再構築化のために、更なる貢献を果たしてくれそうな福井のトラムに期待を膨らませています。
シュツットガルト市内を走るトラム

 トラムの停留所にある人気のアイス屋さん
 福井市内を走るトラムをバックにえちぜん鉄道の伊東専務





2017年5月25日木曜日

No.15 オランデーズソースの由来

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
 

 白アスパラにかけて食べる「オランデーズソース」。
ドイツにて人気のあるソースですが、実はドイツ料理ではなく、フランス高級料理の基本ソースの一つです。白だけでなく緑アスパラにも、他のお野菜やお魚、お肉にも合う味です。
 

 ソースの名前の意味は「オランダのソース」。フランス料理なのに、なぜオランダ?
 

 第一次世界大戦中のフランス国内ではバター不足に悩まされていました。 バターがなくては美味しいソースが作れない! そこで、このソースを作るために、オランダからバターを輸入していた、というのが由来だそうです。
 
 さて、読者様方からの「ソースのレシピを教えてほしい」というご要望にお応えしたく、我が家でのレシピをご提供いたします。
 

 材料は全て日本で手に入りますし、焦らず丁寧に時間をかければ、美味しい「オランデーズソース」が出来上がります。是非お試しくださいませ。

必要な材料
・バター250g
・卵黄(生で食べれるような新鮮な卵の卵黄) 3個
・水 大匙3杯
・絞り立てのレモン果汁 大匙2杯
・蜂蜜 小匙2杯
・塩 少々(1,5 g)
・胡椒 少々

作る手順
①バターを柔らかく溶かしておく 。
②卵黄、水、レモン汁、 蜂蜜、塩をボールに入れ、混ぜる。
③ ②を湯せんにかけながら泡立て器でしっかりと混ぜる。
④バターを8回に分けて③に入れ, 泡立器できれいに混ぜる。
⑤全体が綺麗なクリーム状になったら湯煎から外す。
⑥胡椒を入れ、味を整える。
 
注意事項
1) バターを柔らかくする時は約45℃で。高温で溶かすと、バターが分離してしまいます。
2) 作る手順②の湯せんの温度は80℃が理想です。80℃を超えると、 卵黄が固くなってしまいます。
3) バターを一度に全部加えると乳化がうまくいかないので、最低でも8回に分けて、少しずつ混ぜてください。
4) ソースがポターっとしたクリーム状になるまでには、20〜30分かかりますので、ゆったりとしたお気持ちでお料理ください。

お口に合いますように。


2017年5月11日木曜日

No.14 白アスパラガス

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 んっ? んっ! おっ!おいしい〜!!」
ツルンっとほおばると、 ふわ〜っとした春の香りとジュワーっとした野菜汁が口の中に広がり、舌の上ではトロ〜っと溶けるような絶妙な自然の甘みが味わえます。
 

 直径2cmもの太さを持ち、長さは25cmほどもあるドイツ産の白アスパラガス。 白アスパラの出荷期間は4月中旬から6月中旬までと限定されており、この時期、全ドイツ国民が夢中になって食べています。ドイツ国内での年間生産量は12万トン。平均すると、一人当たり1シーズンに1,6kg食べていることになります。国産白アスパラの平均的値段は、1kgにつき7€ (約900円) 。ドイツ野菜の中では最高額ランクです。
 

 白アスパラは鮮度が何より大切。ほっぺが落ちるほど美味しいものを食べるためには、穫れたてでなくてはなりません。
 

  収穫したての白アスパラは美しい白金色をしており、瑞々しく輝いています。その艶やかな皮をピーラーで剥き、根元2cmくらいを切り落とし、グラグラ沸騰したお湯に入れ、白アスパラが「ぽた〜」と柔らかく茹で上がったら出来上がりです。
 

 白アスパラと抜群に相性が良いのは、バターと卵黄で作られた「オランデーズソース」です。「ぽた〜」としたクリーミーなソースです。白金色のアスパラと黄金色の「オランデーズソース」は色彩も美しく、視覚的にも存分に楽しめます。
 

 白アスパラ栽培法は18世紀半ばに発見されました。それ以降、ドイツでは白アスパラの人気が高まり、19世紀のドイツのアスパラ栽培はもっぱら白ばかりになりました。もう緑ではなく、白ばかり食べたくなってしまったのですね。
 

 これを読んで、「へえ〜、そんなに美味しいの?」と思われたのではないでしょうか?
 

 「はい、そんなに美味しいの!! 」 です。




2017年4月27日木曜日

No.13 ドイツの有給休暇制度

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 
 

 ドイツの「有給消化率」は100%で、1人当たりが年に取得する有給休暇平均日数は30日です。祝日(10日)と日曜日(52回か53回)の労働は禁止されているので、年間ほぼ100日の休日があります。
 

 ドイツでは「休暇の最低日数に関する法律」があり、企業の管理職には、部下に有給休暇を完全消化させる義務が課されています。一方、社員は上司が組合から批判されないためにも全ての有給休暇を消費します。
 

 それから、「病休」と「有休」は完全に区別されています。日本での一般的なケースのように病気になったからといって有給休暇を使う、ということはあり得ません。
 

 もしも、バカンス中に病気になった場合は?
 

 「有休」ではなく「病休」扱いになり、「健康になった後に有休を取り直す」ことになります。そもそも「有休」の目的は「趣味を楽しんだり、家族や友人達とリラックスする時間を共有したり、心身ともに休養するために使うもの」。負傷したり病気になってしまっては「休暇目的」が果たせないという識見なのです。
 

 ドイツの年間平均労働時間は、約1300時間。日本よりも20%も短いのですが、労働時間あたりのGDP(国内総生産)は、日本の1,5倍もあるのです。
  勤労の「長さ」ではなく「質」が重視されているドイツ。高い集中力を持って合理的かつ効率的、生産的に働いています。
 

 近年は、「長期バカンス中に仕事のメールや電話を完全無視できない人がいる」ことが頻繁に論議されています。
 

 「100%仕事から離れてバカンスを楽しむことにより自分らしさを取り戻し、もっと心に余裕を持って人生を楽しむべき 」という世論が年々高まっています。
 

 「勤労の質」だけでなく、「バカンスの質」も改めて重要視され始めているのです。

2017年4月13日木曜日

essay No.12/ Pulse of Europe (EUのために)

エッセイ 静かなドイツの森の窓から



 4月からシュツットガルト市庁舎の鐘がベートーベンの第九交響曲の「歓喜の歌」を奏でるようになりました。

 
 3月末のイギリスの EU離脱正式通告直後、市民団体「Pulse of Europe 」が 『「EUの歌」である「歓喜の歌」を市庁舎の鐘で奏でる』請願を市に提出し、それが受理されたのです。  

 
 「EU崩壊による平和な生活を失う可能性」という不安に駆られた市民が「もう一度EUの根底にある欧州統合の意義を見直そう」と始めた「Pulse of Europe 」。

 
 毎日曜日、EU諸国内80以上の各都市にて集いを開催しており、シュツットガルト市庁舎広場にても、大勢の老若男女がEUの平和を祈願するスピーチを行なったり聞いたりしています。

  
 EUのルーツを辿ると、もともとの出発点は「何百年もの間ヨーロッパで繰り返されてきた戦争の悲劇はもうコリゴリ。平和を維持しよう。そのためには、国と国がお互いに寛容と尊厳を持って仲良く共に繁栄していこう」という考えでの1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立でした。

 
 その後、共同体の名前や条約や加盟国が時代と共に変化し、現在のEUに至っています。  

  
 EUの恩恵を受けているのは加盟国民だけではありません。日本人である私も、EUのあるプロジェクトのお陰にて、ドイツからの派遣留学生としてアムステルダム音大で勉強し人生を豊かにしてもらいました。  

 
 あるイギリス人も語っていました、「移動の自由の恩恵を受けて私も国も豊かになった。」と。  

 
 シュツットガルト人口中、約8%EU加盟国民で、44%は世界諸国からの移住民です。 シュツットガルトは工業と芸術の都市ですが、どちらの分野にも、 優れた専門家が多種多様な国から集まっています。 

 
 先日の「Pulse of Europe 」でこう言った人がいました。「多様性は、シュツットガルトの財産、発展、力の源である。」





No.12 Pulse of Europe (EUの平和を祈願)

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 

 4月からシュツットガルト市庁舎の鐘がベートーベンの第九交響曲の「歓喜の歌」を奏でるようになりました。
 

 3月末のイギリスの EU離脱正式通告直後、市民団体「Pulse of Europe」 」が 『「 EUの歌」である「歓喜の歌」を市庁舎の鐘で奏でる』請願を市に提出し、それが受理されたのです。
 
 「EU崩壊による平和な生活を失う可能性」という不安に駆られた市民が「もう一度EUの根底にある欧州統合の意義を見直そう」と始めた「Pulse of Europe 」。毎日曜日、EU諸国内80以上の各都市にて集いを開催しており、シュツットガルト市庁舎広場にても、大勢の老若男女がEUの平和を祈願するスピーチを行なったり聞いたりしています。
 

 EUのルーツを辿ると、もともとの出発点は「何百年もの間ヨーロッパで繰り返されてきた戦争の悲劇はもうコリゴリ。平和を維持しよう。そのためには、国と国がお互いに寛容と尊厳を持って仲良く共に繁栄していこう」という考えでの1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立でした。その後、共同体の名前や条約や加盟国が時代と共に変化し、現在のEUに至っています。
 

 EUの恩恵を受けているのは加盟国民だけではありません。日本人である私も、EUのあるプロジェクトのお陰にて、ドイツからの派遣留学生としてアムステルダム音大で勉強し人生を豊かにしてもらいました。
 

 あるイギリス人も語っていました、「移動の自由の恩恵を受けて私も国も豊かになった。」と。
 

 シュツットガルト人口中、約8%はEU加盟国民で、44%は世界諸国からの移住民です。シュツットガルトは工業と芸術の都市ですが、どちらの分野にも、 優れた専門家が多種多様な国から集まっています。先日の「Pulse of Europe 」でこう言った人がいました。「多様性は、シュツットガルトの財産、発展、力の源である。」









2017年3月28日火曜日

No.11 ドイツの抹茶ブーム


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

  振り返ってみると、「約10年前からの煎茶ブーム」が「抹茶ブームのルーツ」でした。

「煎茶は苦くて飲みにくい」という理由にて、一般人には広がりにくかったのですが、「フレーバー煎茶」がヒットしてからは需要が高くなりました。

「フレーバー煎茶」とは、茶葉に花や果実やスパイスを加えた煎茶です。 

「 煎茶ブーム」により緑茶慣れしたドイツで今度は、約5年ほど前に抹茶がブレイクしました。

MATCHA」という言葉を知らない人は今やいないと言っても過言ではないでしょう。

紅茶販売店やハーブティー専門店には必ず「MATCHA 」が販売されています。

お値段は、30gの缶入りだと、だいたい20€(約200円)〜50€(約6000円)。
日本での 約3倍の値段ですが、「MATCHA 」販売ゼロという日はないそうです。

 抹茶入りドリンクの中でも人気があるのは、抹茶ラテや抹茶豆乳、ライムなどの果汁と混ぜた抹茶ジュースです。

「緑茶味の強化 」のために「フレーバー煎茶」と抹茶を自分でミックスさせて飲む人もいるそうです。

また、お米を牛乳で炊き、砂糖と抹茶で味付けした「抹茶ミルクライス 」もドイツ人好みのデザートです。

 高級料理店では、抹茶を料理の色づけに用いたり、薬味や隠し味などとして使っています。

抹茶の気品ある香りや、深みのある味や、禅寺の苔を彷彿させる美しい緑色には、高級西洋料理に引けを取らない香と味と色があります。

 鎌倉時代に宗に渡った栄西が、禅宗と抹茶を飲む習慣を日本に持ち帰ってから約800年。

時代を経た今、「MATCHA 」として生まれ変わり、「フレーバー煎茶」や「ミルクライス 」や「高級西洋料理」たちと生き生きと楽しく仲良く交流している抹茶。

様々な経験と時を重ねたことにより控えめながらも確固とした自分を持ち、和敬 を心得ている「MATCHA 」を頼もしく誇らしく感じます。

写真の説明: シュツットガルトの紅茶専門店にて抹茶碗を持つ店員さん 
隣の棚の上には抹茶や茶杓、茶筅などの茶道具が置かれている。



2017年3月17日金曜日

No.10 マウルブロン修道院のマウルタッシェ

エッセイ 静かなドイツの森の窓から


 シュツットガルト郊外にあるマウルブロン修道院

 ユネスコ世界遺産に登録されているこの修道院の修道士は普段から完全な菜食を貫いており、平信徒(仏教でいう在家)は断食期間中の肉食を絶つように促されています。 

 キリスト教の断食期間は毎年変動しますが、今年は3月1日から4月15日まで。 

 「断食期間マウルブロン修道院に纏わる、こんなお話があります。 

 17世紀半ば、三十年戦争と呼ばれる悲惨な戦争は、ドイツの都市も農村も荒廃させました。

 この戦争のせいでドイツ人口は約3分の1まで激減してしまいました。 

 そんなある日、マウルブロン修道院の修道士は、回廊にお肉の塊を見つけます。 

それは肉食がタブー中のタブーである断食期間中の出来事でした。 

 厳しい修行に耐え抜いている修道士は並々ならぬ自制心を持っています。

 しかし今まさに、ドイツ全土が餓死の恐怖に襲われ続けている緊急事態。修道士はお肉を手に取り、料理する決心をしました。お肉を可能な限り細かく切り、ほうれん草と混ぜました。

断食期間中の肉食は神への冒涜。どうか神の怒りに触れませんように。と苦悩した修道士は、ある手段を取ります。 

神様からお肉が見えないように、ほうれん草と一緒に皮の中に包もう。

このような逸話から、この料理は神への欺き(Herrgottsbscheiserle)』という渾名を持ち、マウルタッシェ」と呼ばれています。 

 現代ドイツ人の約10%は菜食主義者であり、そのほとんどは20代の若者です。 

 神を欺いてまでお肉を入れたマウルタッシェは、400年の時を経て変化しました。 
 
 今の若者に人気なのは お肉なし野菜マウルタッシェ」 なのです。