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2018年4月12日木曜日

essay No.36 イースター(復活祭)


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

  
ドイツの国民祝日であるイースター(復活祭)の日にちは毎年異なります。

 
 移住民の多いドイツでは宗教観も様々であり、現在では 「キリストの復活」よりも「春の訪れ」を祝う人の方が多いように感じます。

 ドイツの春の訪れは唐突です。 3月中旬頃までドーンと居座っている厳つい冬将軍は、 ある朝突然姿をくらまし、暖かい春が舞い降りてきます。この体験をすると、宗教に関係なく誰もが、春の象徴である生命の息吹を感じ、春を祝い、春の来訪に感謝したくなります。

 
  新しい生命が輝きだす春のお祝いであるイースターには、生命の象徴である卵や、 多産であることから豊穣のシンボルである兎がイースターグッズのモチーフとして使われています。

 春分のころになると、色鮮やかに塗られたゆで卵や、卵の形やウサギの姿をしたチョコレートが売られるようになり、「今年は何日がイースターだったかな?」「3月中旬から4月中旬のどこかの日曜日だけど... 」という会話が飛び交うようになります。

 
 イースターの日取りは、「春分の日のあとに来る最初の満月の次の日曜日」というように定められています。今年の春分の日は3月21日でした。満月になったのは3月31日、土曜日。そこから一番近い日曜日がイースター日ですから、今年は4月1日だったわけです。来年の場合は、今年よりも3週間も遅く421日になります。

 イースターは「十字架に掛けられて亡くなったイエス・キリストの復活を祝する日」だけでなく 、「春の到来をお祝いする日」でもあります。「イースター」の語源は「エオストレ(Eostre)」という春の女神の名前であるという説もあります。

 冬の間はついつい厳しい面持ちをしているドイツ人ですが、この時期になると「卵から孵った雛」のように元気よく活気づいた表情になります。



2017年9月28日木曜日

essay No.23 ドイツの挨拶

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 ドイツの一般的な挨拶の仕方は握手です。

立場が上の人から下の人へ手を差し伸べるのが常識となっています。しかし、仕事絡みのないパーティーなどでは、社会的立場や年齢を問わず、その場にいる者同士が自ら積極的に握手を求め合います。

 手を握る強弱は十人十色です。ソフトに「ふわっと握る人や、1メートルくらい向こうから助走をつけてグワシッ!と握る人、こちらがイタタタッ!と悲鳴を上げそうになるほど強く握ってきたり、3分くらいシェイクし続けて止めない人もいます。

 他の挨拶の仕方では、家族や親しい友人同士でのハグがあります。ハグ=抱擁。抱擁と言うと淫靡な感じがしますが、ハグにいやらしさはありません。ハグは家族愛や友情を確認し合える素晴らしい方法です。

 人間にとって弱点である背中に手を回すハグは、お互いに信用し合っていないと出来ないものです。

 相手のことを心から大切に思っている。信頼している。共に喜びを分かち合い、 辛い時にはあなたの助けになりたい。という人間愛に溢れる気持ちを身体で伝い合える 挨拶がハグです。

 また、私たち日本人にとってはえっ!?とビックリするような挨拶習慣もあります。同性だろうが異性だろうが、親しい友人との挨拶として、右にチュ、左にチュと両方の頬にキスをします。

 挨拶とは言え、嫌いな人ともチュするの!?と思いませんか?

 スキンシップ効果とは不思議なもので、喧嘩をしたり気まずくなった相手とチュッ、チュッと挨拶を交わすことによって、相手に対する気持ちが和らぎ、友人としての距離感が再び縮まる効力があるようです。

  何百年も戦争が繰り返されてきたヨーロッパ大陸に住む人々が、争いごとをせずに仲良くし続ける方法」の一つとして習慣化していったのが、これらの挨拶なのかもしれません。

2017年4月13日木曜日

essay No.12/ Pulse of Europe (EUのために)

エッセイ 静かなドイツの森の窓から



 4月からシュツットガルト市庁舎の鐘がベートーベンの第九交響曲の「歓喜の歌」を奏でるようになりました。

 
 3月末のイギリスの EU離脱正式通告直後、市民団体「Pulse of Europe 」が 『「EUの歌」である「歓喜の歌」を市庁舎の鐘で奏でる』請願を市に提出し、それが受理されたのです。  

 
 「EU崩壊による平和な生活を失う可能性」という不安に駆られた市民が「もう一度EUの根底にある欧州統合の意義を見直そう」と始めた「Pulse of Europe 」。

 
 毎日曜日、EU諸国内80以上の各都市にて集いを開催しており、シュツットガルト市庁舎広場にても、大勢の老若男女がEUの平和を祈願するスピーチを行なったり聞いたりしています。

  
 EUのルーツを辿ると、もともとの出発点は「何百年もの間ヨーロッパで繰り返されてきた戦争の悲劇はもうコリゴリ。平和を維持しよう。そのためには、国と国がお互いに寛容と尊厳を持って仲良く共に繁栄していこう」という考えでの1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立でした。

 
 その後、共同体の名前や条約や加盟国が時代と共に変化し、現在のEUに至っています。  

  
 EUの恩恵を受けているのは加盟国民だけではありません。日本人である私も、EUのあるプロジェクトのお陰にて、ドイツからの派遣留学生としてアムステルダム音大で勉強し人生を豊かにしてもらいました。  

 
 あるイギリス人も語っていました、「移動の自由の恩恵を受けて私も国も豊かになった。」と。  

 
 シュツットガルト人口中、約8%EU加盟国民で、44%は世界諸国からの移住民です。 シュツットガルトは工業と芸術の都市ですが、どちらの分野にも、 優れた専門家が多種多様な国から集まっています。 

 
 先日の「Pulse of Europe 」でこう言った人がいました。「多様性は、シュツットガルトの財産、発展、力の源である。」





2017年2月14日火曜日

No.08 バレンタインにフェアトレードの薔薇を

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 
 ドイツでは、日本の習慣のようにチョコレートではなく「バレンタインデーには男性から女性へ花」を贈ります。

 
 ここ数年来、2月14日に贈る花の中で最も人気のあるのは、「フェアトレード認証のバラ」です。

また、ドイツではフェアトレード認証のバラについての記事が掲載されている新聞や雑誌が年々増え続けています。

 
 「フェアトレード」とは「発展途上国からの商品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみ」のことで、ドイツでは約20年前から促進され続けており、共感を持つ一般人の数も毎年増えています。

 
 「バレンタインデー」と「バラ」と「フェアトレード」には、実は次のような関連があります。

 
 2月のこの時期になると、約1500㌧のバラがケニアからドイツへ運送されてきます。総数4千万本以上のバラが、バレンタインデーのためにドイツに輸入されるのです。

 
 ケニアにあるバラの花卉(かき)農園では、悪労働条件に加え、農薬による健康と環境への弊害や、農園での多量散水が原因となっての水不足など、 問題が多々あります。

 
 「ケニアの人権問題と環境問題の改善を支援したい」 バレンタインデーに大切な恋人へバラを贈りたいこれらの葛藤の末「今、一人一人に出来ること」として浸透していったのが「フェアトレード認証のバラ」を贈ることなのです。




【写真説明】国際フェアトレードラベル機構の認証ラベル(右上)とバラの花束(ドイツのフラワーギフト通販カタログより)






 









 








2016年12月26日月曜日

essay No.5 / クリスマスマーケット

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 ここはおとぎの国なの?

 そんな錯覚を起こさせるシュツットガルトのクリスマスマーケット。 その美しさや世界最大規模を誇る壮大さが魅力です。

 シュツットガルトのクリスマスマーケットは全土4km²の広さです。そこには280軒以上のログハウスが立ち並び、どのログハウスの屋根にも美しい飾り付けが施されています。「屋根の飾り付けによる最美ログハウスコンテスト」が行なわれるからです。

 各ログハウス内では独自の商品が販売されています。クリスマス菓子やツリー用装飾品、冬用衣服、食料品など。ここに来れば、この時期の必要品で手に入らないものはなし。

 「厳しい冬を越すための生活必需品や、クリスマスに贅沢出来るようなお菓子を物々交換する」ために14世紀に発祥したクリスマスマーケット。
 
 11月末から4週間開催され、連日のべ1千人、期間中合計4万人以上の人々が世界中から訪れてきます。
 
地元民にとっては「仕事帰りの立ち飲みホットワイン 」が根強い人気を博しています。おとぎの国にいるような雰囲気の中で一杯飲めば、心も体もポカポカして「良い気分〜」で帰宅出来ます。
 
夢の国のようなクリスマスマーケット。1224日正午になると跡形もなく消えてしまいます。人々もログハウスもなく、残るは静けさのみ。
 
 24日の正午以降は市内全てのお店が閉まり、街は完全なる静寂に包まれます。 イエス・キリストの降誕を祝うのがクリスマス。人々はしじまの中で厳粛な気持ちを深め、神聖なる聖夜を迎えます。

.....
 「おとぎの国』の数々の写真をご覧になれます。 是非こちらのリンクからご閲覧下さいませ。http://junko-yamamoto.blogspot.de/2016/12/2016.html





2016年11月22日火曜日

essay No.3 / ノイアーワイン 地元でしか飲めないワイン

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
 
 日本の家族や友人たちに送ってあげたいけど出来ない!
こんなに美味しいのに〜!という飲み物の一つが「ノイアーワイン」です。
 
 直訳すると「新ワイン」(ノイアー=新)となります。
 
 なぜ日本に送れないのか?
 
 瓶の栓が密封されていないからです。横にすると中の飲み物がこぼれてしまいます。
 
 どうして栓がちゃんとしまっていないのか?
 
 瓶を密封すると、中の飲み物が爆発して容器が破裂する可能性があるのです。
 
 「ノイアーワイン」とは、収穫したばかりのブドウを水と酵母に混ぜた、発酵途中のブドウ酒です。
 
 初めの頃は炭酸入りブドウジュースみたいな味がします。まだワインになる前の状態なので、グラスに注ぐとか細かい 
 泡がシュワシュワ〜ッと出てきて、まるでシャンパンを注ぐような繊細な音と、グラスの中で 踊る微細な泡を楽しく鑑賞出来ます。
 
 発酵が進み続けるので、ひごと甘みがひいていき、徐々にワインらしい味になっていきます。
 
 3週間ほどでアルコール含有量は11%まで上昇します。  
 風味やアルコール量の変化を連日堪能できるのはノイアーワインならではで、「本日限定の味を香り」が日々楽しめます。
 
 風味やアルコール度が好みに達した日にグビ〜っと飲みきります。
 
 アルコール含有量1%の甘い炭酸入りブドウジュースとして飲むか、もう少し待って炭酸と甘みの風味が控えめになった8%くらいの軽めのお酒として楽しむか、もしくは11%のワインとして一献傾けるかなど、嗜み方はさまざまです。   
 ノイアーワインには乳酸菌と豊富なビタミンB1やB2が 含まれているので、健康や美容に良い効能効果があります。 
 値段は大体1本(750ml)3ユーロ(約350円)。秋限定で販売されます。
 
 旬産旬消か地産地消のノイアーワイン、最高に美味しいです!