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2019年12月12日木曜日

No.76 クリッペ 

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 「飼い葉桶」を意味する「クリッぺ(Krippe)」は、イエス・キリストの生誕の様子をフィギュアで表したもので、12月の風物詩です。


 イエス・キリストは牛やロバを飼う家畜小屋で生まれ、飼い葉桶に寝かせられていたと伝えられています。


 飼い葉桶を囲むようにマリアとヨゼフ、それを見守るかのような羊飼いと羊がいるのが一般的なクリッペですが、凝ったものですとそれ以外にも、聖書に登場する人物や動物がいたり、家畜小屋の周りの樹木や星や、生誕話に纏わるいろいろな小道具などもあります。


 シュツッツガルトのクリスマスマーケット敷地内のクリッペも本格的です。本物の家畜小屋が設置され、期間中は馬や羊やロバが飼われており、家畜小屋の中には、木彫りで等身大に作られたマリアやヨゼフや生まれたばかりのイエス・キリストのフィギュアが飾られてあります。


 クリッペの大きさは実に様々で、このように等身大のものから、マッチ箱の中に幾つものフィギュアが収められているような超ミニチュアなものまであります。 サイズだけでなく素材もいろいろです。木や陶器や蝋などが主な素材ですが、伝統的なクリッペはシモフリ松の木が使用されています。シモフリ松の木は、柔らかくて彫りやすく、害虫を寄せ付けず、香ばしい匂いを放つため適しているそうです。


 ドイツ東部にあるエルツ山岳地方(シュツッツガルトから東へ450km)は、クリッペなどの木彫りの工芸品の産地として有名です。この地方の伝統の技で作られるクリッペはとても高価ですが、美しく温かみに溢れて魅力的です。


 「いつか自分好みのクリッペを自宅に飾りたい」と願って、そのために貯金をし、450km離れているエルツ山岳地方まで足を運び、好みの作家に特注する友人もいます。




クリスマスマーケットの様子がご覧になれます。是非こちらのリンクからご閲覧下さいませ。 
http://junko-yamamoto.blogspot.de/2016/12/2016.html

2018年4月12日木曜日

essay No.36 イースター(復活祭)


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

  
ドイツの国民祝日であるイースター(復活祭)の日にちは毎年異なります。

 
 移住民の多いドイツでは宗教観も様々であり、現在では 「キリストの復活」よりも「春の訪れ」を祝う人の方が多いように感じます。

 ドイツの春の訪れは唐突です。 3月中旬頃までドーンと居座っている厳つい冬将軍は、 ある朝突然姿をくらまし、暖かい春が舞い降りてきます。この体験をすると、宗教に関係なく誰もが、春の象徴である生命の息吹を感じ、春を祝い、春の来訪に感謝したくなります。

 
  新しい生命が輝きだす春のお祝いであるイースターには、生命の象徴である卵や、 多産であることから豊穣のシンボルである兎がイースターグッズのモチーフとして使われています。

 春分のころになると、色鮮やかに塗られたゆで卵や、卵の形やウサギの姿をしたチョコレートが売られるようになり、「今年は何日がイースターだったかな?」「3月中旬から4月中旬のどこかの日曜日だけど... 」という会話が飛び交うようになります。

 
 イースターの日取りは、「春分の日のあとに来る最初の満月の次の日曜日」というように定められています。今年の春分の日は3月21日でした。満月になったのは3月31日、土曜日。そこから一番近い日曜日がイースター日ですから、今年は4月1日だったわけです。来年の場合は、今年よりも3週間も遅く421日になります。

 イースターは「十字架に掛けられて亡くなったイエス・キリストの復活を祝する日」だけでなく 、「春の到来をお祝いする日」でもあります。「イースター」の語源は「エオストレ(Eostre)」という春の女神の名前であるという説もあります。

 冬の間はついつい厳しい面持ちをしているドイツ人ですが、この時期になると「卵から孵った雛」のように元気よく活気づいた表情になります。



2017年6月22日木曜日

No.17 トラム(Tram) 路面電車

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
  
 ドイツ語でトラム(Tram)とは、路面電車のこと。
 
 シュツットガルトのトラムは約150年の歴史があり、末永く市民に愛用され続けるために一路邁進している事柄が多くあると聞いています。その中から、特記すべき4点をご紹介します。
 
 1.技術。
高齢者や身体障害者やベビーカー使用の親子連れにとって優しいバリアフリー化が、各電車と各停留所で徹底されています。
 
 2.運用のネットワーク。
ドイツ鉄道や市バスや郊外バスと切符を共通にして、利用しやすい仕組みが作られています。そして、利用者が乗り換えしやすいように、停留所が隣同士に設置されており、トラムとバス共通の広場が設けられています。

 3.景観保護。
芝生軌道の保守と区間拡大が推進され、利用率が高い停留所付近には緑溢れる広場が設置されています。
それ以外にも、トラムと停留所のデザインに統一性を持たせて魅力的な景観作りがなされています。
 
 4.環境保護。
市と協力しながら『市の美しい空気保全のためになるべく車を乗らない日(昨年2016年は計85日あり)』には切符が半額で提供されています。
その他にも、トラムに自転車を乗せるスペースが設置されていたり、市内の各停留所には公共用レンタルサイクルサービスがあります。

 停留所から目的地までチョロっと自転車で行けるシステムがうまく出来ています。これも、市の空気環境保全と地球温暖化緩和策のために、車をなるべく使用しないでおこうという取り組みです。
 
 私が子供のころは、 路面電車なんて田舎の乗り物だという意識がありましたが、違います!
 路面電車はヨーロッパでは、ハイテク、美観、環境保護などの点にて注目を浴びているクールな乗り物で、トラムのない都市なんてカッコワルイのです。
 
 故郷福井にドイツ製のトラムが走っているのが嬉しく誇らしいですし 、住民のため、また都市再構築化のために、更なる貢献を果たしてくれそうな福井のトラムに期待を膨らませています。
シュツットガルト市内を走るトラム

 トラムの停留所にある人気のアイス屋さん
 福井市内を走るトラムをバックにえちぜん鉄道の伊東専務





2017年6月8日木曜日

No.16 日本人の「陰部隠しポーズ」

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
 
 身振り手振りにもお国柄があり、日本人の習慣でドイツでは誤解されたり不思議がられるものもたくさんあります。

 その中から、私の失敗談を3つご紹介します。
 

 1. 「おへその下あたりの位置で両手を合わせ指先を重ねるお辞儀」は美しいステージマナーであるはずなのに、客席からクスクス笑いが起こるのはなぜ?
 

 ドイツでは密かに、日本人の「陰部隠しポーズ」「お小便我慢ポーズ」と言われています。
 理由は手の位置にあるそうです。しかも日本人女性は 恥じらいの美徳を教え込まれてきたせいか、恥ずかしそうな顔をしながらこのポーズをするので、いらぬ想像力を掻き立ててしまうようです。
 

 では、ドイツ人は?
 両手をだらりと両脇に垂らしたままお辞儀をする人がほとんどです。
 

 2. 鼻に手を当てながら「ワタシ、ワタシ」と自分の事を指し示すと、ドイツ人は困惑し、鼻をじぃっと見ます。「鼻が痒いのか」「鼻に何かついてるのか」と思うそうです。
 

 説明すると、「それは君の鼻で、君じゃない」とゴモットモなご指摘。
 自分の胸に手を当てる動作をするのがドイツ式。「自分の「心」を知ってもらおうとするため」だそうです。
 

 3. ドイツ人が人を手招きする時は、手のひらを「上」に向けて指を曲げますが、日本人は 手のひらを「下」に。日本式 「 おいでおいで」は「しっ、しっ、あっちに行け!」という意味になります。
 

 これら3つの他にも、まだまだ沢山のシデカシをしてきた留学初期時代。ドイツの友人たちは、私が傷つかないように優しくそっと指摘してくれたり、ユーモアを交えて笑いに変えてくれました。
 そのように大らかに受け入れてくれた彼らに対して今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

 左から右へ: ドイツでは誤解を受けるポーズ、ドイツ式の自分を指すしぐさ、ドイツ式の「おいでおいで」





2017年5月25日木曜日

No.15 オランデーズソースの由来

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
 

 白アスパラにかけて食べる「オランデーズソース」。
ドイツにて人気のあるソースですが、実はドイツ料理ではなく、フランス高級料理の基本ソースの一つです。白だけでなく緑アスパラにも、他のお野菜やお魚、お肉にも合う味です。
 

 ソースの名前の意味は「オランダのソース」。フランス料理なのに、なぜオランダ?
 

 第一次世界大戦中のフランス国内ではバター不足に悩まされていました。 バターがなくては美味しいソースが作れない! そこで、このソースを作るために、オランダからバターを輸入していた、というのが由来だそうです。
 
 さて、読者様方からの「ソースのレシピを教えてほしい」というご要望にお応えしたく、我が家でのレシピをご提供いたします。
 

 材料は全て日本で手に入りますし、焦らず丁寧に時間をかければ、美味しい「オランデーズソース」が出来上がります。是非お試しくださいませ。

必要な材料
・バター250g
・卵黄(生で食べれるような新鮮な卵の卵黄) 3個
・水 大匙3杯
・絞り立てのレモン果汁 大匙2杯
・蜂蜜 小匙2杯
・塩 少々(1,5 g)
・胡椒 少々

作る手順
①バターを柔らかく溶かしておく 。
②卵黄、水、レモン汁、 蜂蜜、塩をボールに入れ、混ぜる。
③ ②を湯せんにかけながら泡立て器でしっかりと混ぜる。
④バターを8回に分けて③に入れ, 泡立器できれいに混ぜる。
⑤全体が綺麗なクリーム状になったら湯煎から外す。
⑥胡椒を入れ、味を整える。
 
注意事項
1) バターを柔らかくする時は約45℃で。高温で溶かすと、バターが分離してしまいます。
2) 作る手順②の湯せんの温度は80℃が理想です。80℃を超えると、 卵黄が固くなってしまいます。
3) バターを一度に全部加えると乳化がうまくいかないので、最低でも8回に分けて、少しずつ混ぜてください。
4) ソースがポターっとしたクリーム状になるまでには、20〜30分かかりますので、ゆったりとしたお気持ちでお料理ください。

お口に合いますように。


2017年5月11日木曜日

No.14 白アスパラガス

エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 んっ? んっ! おっ!おいしい〜!!」
ツルンっとほおばると、 ふわ〜っとした春の香りとジュワーっとした野菜汁が口の中に広がり、舌の上ではトロ〜っと溶けるような絶妙な自然の甘みが味わえます。
 

 直径2cmもの太さを持ち、長さは25cmほどもあるドイツ産の白アスパラガス。 白アスパラの出荷期間は4月中旬から6月中旬までと限定されており、この時期、全ドイツ国民が夢中になって食べています。ドイツ国内での年間生産量は12万トン。平均すると、一人当たり1シーズンに1,6kg食べていることになります。国産白アスパラの平均的値段は、1kgにつき7€ (約900円) 。ドイツ野菜の中では最高額ランクです。
 

 白アスパラは鮮度が何より大切。ほっぺが落ちるほど美味しいものを食べるためには、穫れたてでなくてはなりません。
 

  収穫したての白アスパラは美しい白金色をしており、瑞々しく輝いています。その艶やかな皮をピーラーで剥き、根元2cmくらいを切り落とし、グラグラ沸騰したお湯に入れ、白アスパラが「ぽた〜」と柔らかく茹で上がったら出来上がりです。
 

 白アスパラと抜群に相性が良いのは、バターと卵黄で作られた「オランデーズソース」です。「ぽた〜」としたクリーミーなソースです。白金色のアスパラと黄金色の「オランデーズソース」は色彩も美しく、視覚的にも存分に楽しめます。
 

 白アスパラ栽培法は18世紀半ばに発見されました。それ以降、ドイツでは白アスパラの人気が高まり、19世紀のドイツのアスパラ栽培はもっぱら白ばかりになりました。もう緑ではなく、白ばかり食べたくなってしまったのですね。
 

 これを読んで、「へえ〜、そんなに美味しいの?」と思われたのではないでしょうか?
 

 「はい、そんなに美味しいの!! 」 です。




2017年4月13日木曜日

essay No.12/ Pulse of Europe (EUのために)

エッセイ 静かなドイツの森の窓から



 4月からシュツットガルト市庁舎の鐘がベートーベンの第九交響曲の「歓喜の歌」を奏でるようになりました。

 
 3月末のイギリスの EU離脱正式通告直後、市民団体「Pulse of Europe 」が 『「EUの歌」である「歓喜の歌」を市庁舎の鐘で奏でる』請願を市に提出し、それが受理されたのです。  

 
 「EU崩壊による平和な生活を失う可能性」という不安に駆られた市民が「もう一度EUの根底にある欧州統合の意義を見直そう」と始めた「Pulse of Europe 」。

 
 毎日曜日、EU諸国内80以上の各都市にて集いを開催しており、シュツットガルト市庁舎広場にても、大勢の老若男女がEUの平和を祈願するスピーチを行なったり聞いたりしています。

  
 EUのルーツを辿ると、もともとの出発点は「何百年もの間ヨーロッパで繰り返されてきた戦争の悲劇はもうコリゴリ。平和を維持しよう。そのためには、国と国がお互いに寛容と尊厳を持って仲良く共に繁栄していこう」という考えでの1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立でした。

 
 その後、共同体の名前や条約や加盟国が時代と共に変化し、現在のEUに至っています。  

  
 EUの恩恵を受けているのは加盟国民だけではありません。日本人である私も、EUのあるプロジェクトのお陰にて、ドイツからの派遣留学生としてアムステルダム音大で勉強し人生を豊かにしてもらいました。  

 
 あるイギリス人も語っていました、「移動の自由の恩恵を受けて私も国も豊かになった。」と。  

 
 シュツットガルト人口中、約8%EU加盟国民で、44%は世界諸国からの移住民です。 シュツットガルトは工業と芸術の都市ですが、どちらの分野にも、 優れた専門家が多種多様な国から集まっています。 

 
 先日の「Pulse of Europe 」でこう言った人がいました。「多様性は、シュツットガルトの財産、発展、力の源である。」





No.12 Pulse of Europe (EUの平和を祈願)

エッセイ 静かなドイツの森の窓から 

 4月からシュツットガルト市庁舎の鐘がベートーベンの第九交響曲の「歓喜の歌」を奏でるようになりました。
 

 3月末のイギリスの EU離脱正式通告直後、市民団体「Pulse of Europe」 」が 『「 EUの歌」である「歓喜の歌」を市庁舎の鐘で奏でる』請願を市に提出し、それが受理されたのです。
 
 「EU崩壊による平和な生活を失う可能性」という不安に駆られた市民が「もう一度EUの根底にある欧州統合の意義を見直そう」と始めた「Pulse of Europe 」。毎日曜日、EU諸国内80以上の各都市にて集いを開催しており、シュツットガルト市庁舎広場にても、大勢の老若男女がEUの平和を祈願するスピーチを行なったり聞いたりしています。
 

 EUのルーツを辿ると、もともとの出発点は「何百年もの間ヨーロッパで繰り返されてきた戦争の悲劇はもうコリゴリ。平和を維持しよう。そのためには、国と国がお互いに寛容と尊厳を持って仲良く共に繁栄していこう」という考えでの1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の設立でした。その後、共同体の名前や条約や加盟国が時代と共に変化し、現在のEUに至っています。
 

 EUの恩恵を受けているのは加盟国民だけではありません。日本人である私も、EUのあるプロジェクトのお陰にて、ドイツからの派遣留学生としてアムステルダム音大で勉強し人生を豊かにしてもらいました。
 

 あるイギリス人も語っていました、「移動の自由の恩恵を受けて私も国も豊かになった。」と。
 

 シュツットガルト人口中、約8%はEU加盟国民で、44%は世界諸国からの移住民です。シュツットガルトは工業と芸術の都市ですが、どちらの分野にも、 優れた専門家が多種多様な国から集まっています。先日の「Pulse of Europe 」でこう言った人がいました。「多様性は、シュツットガルトの財産、発展、力の源である。」









2017年2月28日火曜日

No.09 ポルシェ博物館


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

 シュツットガルトにあるポルシェ本社に隣接し、斬新なデザインで特別なオーラを放っている「ポルシェ博物館」。

「ポルシェ聖地」とも呼ばれています。


 ポルシェ約80台は3セクションに分かれて展示されています。
各セクションを勝手に名付けると「納得」「溜息」「失神直前」。

 
「納得セクション」では、ポルシェの技術史を知ることが出来ます。

開設(1931)当時生産されていた 消防車やトラクター、 ポルシェ初の電気自動車モーターなどが展示されています。

「そうだったのか!」「トラクターなのに可愛くてお洒落!さすが!」という納得感を得られます。

 
 「溜息セクション』で は、1948年の第1号車から最新のモデルに至るまでのポルシェスポーツカーが年代順に並べられています。それらを溜息交じりに鑑賞し、心ゆくまで堪能できます。

 
 一番テンションが上がるのは「失神直前セクション」。

911」の進化史コーナーや、「ル・マン24時間耐久レース」にてモータースポーツ史上栄光に輝いたレーシングカーがズラリ勢揃いする展示コーナーがあります。

「壮大な夢」や「壮絶な闘い」や「深い哲学」の結晶品である伝説的スーパーカーを観ながら、感動で失神しそうになります。

 
 展示されている車のボンネット内の観察や、試走も可能ですし、オプションとして、エンジンパーツのピックアップから最終のインテリア組み込み工程までを工場内にて見学出来る 「ファクトリーツアー」もあります。

   
  館内ショップでは、全歴代ポルシェ車の大小様々なミニカーが並んでおり、世界各国からの「巡礼者たち」は「my御護り」としてのミニカー選びに勤しんでいます。

 彼らの直向きな姿からは純粋さと情熱が滲み出ており、痛感させられます。ここは「ポルシェ聖地」なのだと。







写真の説明 

ポルシェ博物館前のモニュメント。3台のポルシェ車911が括り付けられている前衛芸術作品。



2017年1月31日火曜日

No.07 オペラハウス


エッセイ 静かなドイツの森の窓から



 シュツットガルトの「オペラハウス」では毎晩オペラやバレエが上演されています。地元民や観光客が来場し、約1400の客席は満席状態で会場は熱気に包まれています。

 
 なぜここまでの人気を博しているのか? ソフト面とハード面のバランスがとても良く、その両方による満足度が大きいためです。 

 
 ソフト面においては、ほぼ毎年の今年のベストオペラハウス受賞歴と、バレエ団の世界的公知たるクオリティーの高さが人気の理由です。

演出家、音楽家、ダンサー、振り付師など全てにおいてハイレベルなのです。

 
 ハード面での人気の理由は、建築物が文化遺産に指定されており、貴重で美しい建物であるということです。

 
 白鳥が泳ぐ湖の畔に威風堂々とそびえ立つオペラハウスの姿を眺めると、誰もが一度中に入ってみたい!誘惑に捕われます。

中に入ると、大理石の床と柱、上品で厚みのあるブルーカーペットや華やかなシャンデリア、湖を見渡せるバルコニー、シャンパンのほのかな香り。

絢爛華麗なホール内だけでなく、ホワイエや回廊を歩くだけでも、建築物としての美しさや内装の統一感の素晴らしさに溜息がでます。

 
 学生時代は毎晩オペラハウスに通っていました。

赫々たる外観の建物の中に入って行くワクワク感や、品位のある建築物の中にいれば自分の品格も上がっていくような楽しい錯覚は、ハード面である建物の偉大さのお陰でした。

ソフト面であるパフォーマンスからの恩恵は、ハイレベルの歌手やダンサーの動作や表情を自分の眼で観察する面白さでした。

 
 20年前、学生券は約200円 。 

 現在は、学生券は約700円、一般券は約1000円から販売されています。

 
 壮麗なドレス姿の人々も、汚れたジーンズと穴のあいたTシャツ姿の学生達も、至福と高揚感に浸り、今宵も会場は熱気に満ち溢れています。



2017年1月17日火曜日

No.06 花火と共にパワフルに迎える新年

エッセイ 静かなドイツの森の窓から
 
 ドイツでは12 31日と 1 1日の2日間だけ花火が許可されており、12月最終平日 3日間という期間限定で販売されています。
 
 3 日間の売り上げ高は約162億円。
 

 花火の消費者は一般市民なのですが、スリルと興奮度の高い種類ばかりです。爆竹音と破裂音や飛行高度と距離が甚だしい種類に人気が集まっています。
 
 花火がクライマックスを迎えるのは新年0時。

 大晦日は夜8時くらいから友人同士で集まってパーティーをします。飲んだり食べたり踊ったり。

11時半を過ぎると皆で外に出ます。戸外でシャンパンを飲みながら花火をするためです。

 町の中心部は人、人、人で溢れています。数えきれないくらいの人達が各々に花火をするので、煙で前が見えません。

ボーっとしていると、とんでもない方向から花火に打たれる場合もあります。

大晦日には必ず『ピーポーピーポー』という救急車音が絶え間なく鳴り響いています。
 
 今年は霧の深い新年を迎えることになり、霧と煙で花火は見えず、連打する爆破音のみが鳴り響く深夜でした。

外気はマイナス5 度。

『花火に打たれるリスクを伴おうが、深い霧や冷気が凄かろうが、新年を明るく華々しく賑やかに迎えるためには、花火なしなんてあり得ないでしょう!?』というのがドイツの新年の迎え方です。

 確かに『寒さや危険をも吹っ飛ばし、嫌なことは全部忘れて前向きに新年を迎えるぞ!』という凄いパワーを感じます。

誰もが『やったるで〜!』という気分になれます。
 
 中世時代の習わしである『音を立てて悪を追い払い、悪のない良い新しい新年を迎える』という元々の由来は忘却の彼方へ消え去られています。
 
 しかし、昔も今も変わらぬ気骨『新年を元気よくパワフルに迎える!』は健在です。




2016年12月26日月曜日

essay No.4 アドヴェントカレンダー


エッセイ 静かなドイツの森の窓から

  
 121日から、ワクワクのカウントダウンが始まります !  


 「アドベントカレンダー」の小窓をいよいよオープンできるのです。


 「アドベントカレンダー」とはクリスマスまでのカウントダウンを楽しむカレンダーで、24個の小窓がついています。 その小窓の中にチョコレートなどのお菓子が入っています。


121日 には「1」の小窓を開き、その中に入っているお菓子を食べます。


12月2日には「2」の小窓を、というように続け、小窓を全部開け終わる日が聖夜1224日になります。


 「今日は何が入っているのかなぁ』というトキメキと同時に、クリスマスが1日近づいた喜びを毎日味わえます。


 「アドベントカレンダー」の「アドベント」の意味は?

ラテン語の「アドベントュス=到来』に由来されています。


「アドベント」とは「イエス・キリストの到来を待ち望むクリスマス前の約4週間」のことです。


 「アドベントカレンダー」は小窓の中にお菓子が入っているものが主流ですが、聖書の一節が書かれたカードや 美しいクリスマスのイラスト、またはクリスマス用装飾品が入っているものもあります。


 シュツットガルトでは「アドベント」期間中、市庁舎が「巨大なアドベントカレンダー」に変身します。


 23の街区を持つ都市シュツットガルト。その市庁舎の窓には
1から24の数字がデコレーションされキラキラ光っています。 


 121日から23日まで毎夕18時になると窓が1つ開かれます。


窓の中から23街区中1街区のワッペンが登場し、音楽が生演奏されます。演奏者達 は各街区の合唱団やオーケストラやバンドの人々です。


12月1日には街区1の、2日には街区2のワッペンと音楽家達が、というように、23日までに23全ての街区のワッペンと音楽家のお披露目が出来るようになっています。


 そして24日は教会を訪れたり、家族たちと家にて、静かに粛々と聖夜を過ごします。